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デフレの持続と企業格差の拡大デフレの持続で悪化する経済環境このような肢行的で大きな格差を伴った景気の進展の背景にあるのが、日本経済を依然として覆っているデフレ状況である。 デフレが続くということは、企業活動にとっては深刻な逆境が続くことである。
なぜなら、デフレの進展の下では、これまでと同じ商品をつくって同じ量を売っていると、企業の収入は次第に減ってくる。 そうした傾向が続けば企業はやがて赤字になる。
赤字企業は要注意先になり、三年も赤字が続けば破綻懸念先となって、企業は資金繰りがつかなくなり、やがて敗退し消滅せざるを得ない。 デフレは放置すれば、このように企業を衰滅させる破壊的な環境をつくり出す。
このような状況は、従って、これまでと同じ生産活動を続けている多くの産業部門や企業群にとっては、深刻な逆境であり、敗退や消滅はしなくても、経済は低迷せざるを得ない。 それが多くの中小企業や地方経済の実態である。
求められる「勝利の方程式」ところが他方では、二OO三年以来、多くの企業の業績は回復し、利益は大幅に増大した。 そのままこれまでの企業活動を続けていれば衰退せざるを得ないデフレという逆境の下で、一群の企業の利益が増大したということは何を意味するのだろうか。
利益の増大したそれらの企業は、これまでとは異なる新しい戦略の下で、抜本的な体質改草を実現し、新しい商品を開発し、新しい市場を開拓して、デフレという一般的な逆境の中で、新しい収益を獲得する道を見いだしたということである。 言い換えれば、これまでの方式とはいまこそ需要創出型の構造改!1~ を全く異なる新しい「勝利の方程式」を開発ないし創出したということである。
が求められているのである。 なぜなら、近年の日本経済は、従来の景気対策などの経済戦略がほとんど機能しない状況に陥ってしまっている。

従来であれば、景気が悪くなれば、金融や財政の景気対策を発動すれば景気は回復させ得た。 ゼロ金利という異常な事態が続き、税収が極端に落ち込んだ近年の日本経済では、伝統的な金融・財政による景気対策の余地は極めて限られており、事実上の機能不全に陥っている。
そうした状況の下で、景気を回復させ、経済を健全な成長軌道に乗せるには、これまでとは全く異なる新しい経済戦略を案出するほかはない。 言い換えれば、国家の経済戦略の面でも新たな「勝利の方程式」が求められているのである。
伝統的な景気対策はケインズ型景気対策として知られる。 これは金融と財政を組み合わせた21政策で、ケインジアンミックスと言われ、第二次大戦後、世界中の国々が景気調節政策として採用してきたものである。
これが近年の日本経済で機能しなくなった。 機能しなくなった証左の一つは、金融政策による景気刺激が効かなくなったことである。
バブル崩壊以降、度重なる利率引き下げで、預金者金利はこの四年間ほど事実上のゼロ金利状態にとどまっている。 こうした状態の下では投資刺激のための貸出金利のこれ以上の引き下げは困難である。
預金者金利をマイナスにすることができれば貸出金利をさらに引き下げることが可能になるかもしれないが、それは事実上不可能である。 言い換えれば、金利による景気刺激機能が停止しているということである。
金利機能が停止しているので、日銀は貨幣供給の量的緩和によって景気刺激を試みている。 市中銀行が日銀に積み立てる当座預金はこの四年間で七倍になっている。

中央銀行はそれだけ貨幣供給の条件を緩和しているのだが、市中に流れる資金量は増加していない。 実際、景気が回復し始めた二OO三年でさえ、貨幣供給の増加率(M2+CDの年末残高の対前年伸び率)は過去五年間の最低値の一・六%にとどまっている。
言い換えれば、量的緩和策による景気刺激効果も極めて限られているということである。 伝統的なケインズ型の景気刺激策のもう一方の柱は財政による刺激である。
公共投資あるいは減税による消費刺激策によって有効需要を創出しようとするものであるが、そのためには財政支出の予算が必要である。 近年の景気の低迷と、さらに高齢化などの構造変化によって、税収などの歳入は歳出の半分ほどに落ち込んでおり、財政支出のための予算の確保は極めて困難な状況にある。
そこで国債や地方債など公債による財政支出が考えられるが、小湖、森政権などによる大量の国債発行の結果、公債の累積債務は二OO四年度で既に七三O兆円、GDP比で一四五%に達している。 こうした状況の下で、景気刺激のためにさらに大量の国債を発行することは多くのリスクが伴うことが懸念される。
返済の見通しが立たない中での大量の国債発行は、必然的に国債価格の低下と利回りの上昇を招く。 そのことは、少なくとも以下のリスクを増幅する恐れが大きい。
第一は、利回り上昇に伴う金利の上昇で、国債の円滑な償還がこれまでのように容易ではなくなる。 言い換えれば、国も、債券価格上昇の影響を受ける地方政府も、公債をあてにした予算の編成がはるかに困難になるということである。
第二は、銀行の経営が難しくなる。 銀行はリスクのある中小企業などへの貸し出しを制限する一方で、国債を大量に購入して資金の運用をはかつているが、国債価格の下落は銀行のパランスシートをゆがめ、経営の健全化の障害となる。
第三は、多くの若い家計への影響である。 何百万世帯という若い家計が長期ロ−ンを組んでマンションなど住居を購入している。
彼らは現在の超低金利の下で返済計画を組んでいるが、公債の利回りの上昇によって長期金利が上昇するようになると、計画よりはるかに多額の返済を余儀なくされるようになる。 かつてのような高度成長時代と違って、これからは給与所得の大幅な上昇は見込めないから、多くの家計で、負債が返済能力を上回って、家計が破綻する恐れが高まる。

国債の発行による景気刺激策は、少なくともこれらのような深刻なリスクを現実化する恐れが大きく、安易に依存することはできない。 言い換えれば、財政による景気刺激策は、財源の不足と予想されるこれらのリスクのために、事実上、機能不全に陥っているのである。
伝統的なケインズ型景気刺激策が機能不全に陥っている以上、政府はこれまでの伝統的な政策ではない新しい経済回復策を模索し、案出する必要がある。 小泉政権は、そうした必要を踏まえ、これまでになかった新しい経済活性化戦略を打ち出している。
それが「需要創出型の構造改革」である。 需要創出型の構造改革は、構造改革によって人々の潜在需要を顕在需要に転化させるもので、顕在化した需要が消費を増加させ、それが雇用を増加させる効果があるので、構造改革と言って、それはリストラによる雇用削減や失業の増加など、もっぱら「痛み」を伴うという先入観があるが、「雇用創出型構造改革」は、改革によって需要と雇用が創出されるのだから、痛みではなく、人々に力を与えるものである。
その意味で、「明るい構造改革」と言うことができる。 近年の日本経済が陥った閉塞状況を打破する新しい戦略として、「需要創出型構造改革」が重要な役割を果たすことが期待されるわけだが、このような構造改革の意味や、あるいはその存在そのものが、世間ではまだ十分に、あるいは適切に理解されているとは言い難い。
「構造改革」がなぜ、どのように誤解されているかみておくことにしよう。

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